入居者を追い出すことはできる?オーナーチェンジの「退去」を解説
更新日: 2023.03.09目次
投資用の不動産物件を購入することで、前貸主から購入者に変更となるオーナーチェンジ。
このオーナーチェンジは入居者がすでに存在することから、投資による利回りが予想しやすく、投資初心者に人気となっています。
一方で、オーナーチェンジによる投資は、入居者との訴訟トラブルになるなど、やや問題が発生しやすい手法でもあります。
ここでは、オーナーチェンジにおける問題点と、解決に向けて入居者を追い出す(=退去させる)ことが可能なのか。また追い出す場合、どのような方法が考えられるのかを説明します。
オーナーチェンジ物件が人気の理由
投資用物件を購入する目的としては、税金対策を除けば利益確保が主になります。
誰もが、より高い利回りで運用したいと考えるでしょう。
オーナーチェンジ物件は、住宅ローンが使用できないことから、買い手が不動産会社や投資家等に限定されるため、空室物件よりも低い価格で取引される傾向にあります。そのため、同じ物件を購入するなら、オーナーチェンジ物の方が安く購入できる分、利回りも高くなる可能性があります。
さらに、家賃収入はもちろんのこと、仲介業者に依頼して入居者を探すという手間を減らし、家賃収入が得られない「収入0の期間」が無いというメリットがあります。
一方、前のオーナーが強引な手法で入居者を確保していたために、購入後に問題が発生するケースもあります。
この『強引』について具体的には、本来なら審査に通ることのない低所得(または無収入)な世帯主に貸し出しをしていたり、賃料を相場より低くしていたり将来における設備投資の空約束など、そもそも無理としか思えない内容であるなど、決して正常といえない契約であることを指します。
そのため、特に1棟規模のオーナーチェンジ物件は当たりはずれの大きいギャンブル物件とも言われており、ときには購入後に入居者を追い出す必要性が出てくる場合もあります。
投資用物件について、すでに入居者が存在するというのはメリットとデメリットの両方があるものです。
入居者が存在するメリット
前述のとおり、投資物件を購入後すぐに家賃収入を得ることができることは大きなメリットでしょう。
また不動産会社とのパイプがない場合は、入居者探しの依頼もままならないことがありますが、そうした対応も必要ありません。
不動産に関する知識や業界へのパイプがなくとも、すぐ収益を得ることができることから、不動産投資の初心者にもおすすめです。
入居者が存在するデメリット
入居者がすでに存在することはメリットでもあり、デメリットでもあります。
たとえば購入した物件における部屋の中の管理状況が不明なことは、大きな不安材料でしょう。
いまの入居者が退去したタイミングで室内を確認してみたら、想像以上にボロボロでリフォーム代が高額になることもあります。
また、入居者自身がトラブルメーカーであったり、家賃を再三にわたり滞納しているなど、問題を抱えているかどうか、実情が分かりにくい点も考えられます。
そもそも入居時の審査が、どのように行われたのか不明なため、購入者が考える審査基準と異なる可能性があります。
それが、前の貸主との単純な考え方の不一致であれば許容することもできますが、そうでなければ、入居者がいること自体が問題となるかも知れません。
入居者を追い出す(退去させる)ことは可能なのか
民法および宅地建物取引業法といった法律にて、賃貸借契約において借主の立場は手厚く保護されています。
そのため、気に入らないといった感情論や、常識的な範囲といった曖昧な理屈で入居者を追い出すことは、ほぼ不可能といえるでしょう。
実際に入居者を追い出す(退去させる)ためには、賃貸借契約に基づいた対応と手順が必要となり、それは費用と時間が多く必要になるものと認識しておく必要があります。
居住権について
賃貸借契約における退去トラブルや立ち退きが発生した場合、よく耳にするのが入居者の居住権についてです。
まず居住権という言葉は、あくまでも一つの概念を表すものであり、法律上に存在するものではありません。そのため『居住権により入居者は守られている』という主張は法的根拠のないものです。
一方で、投資用物件における居住権の概念を定義するのであれば『賃貸借契約に基づいて入居者が居住する権利 』を指していると解釈できます。
つまり、結局は賃貸借契約の内容が重要となるわけであり、居住権そのものではないことがわかります。
賃貸借契約について
一般的に、賃貸マンションやアパートを貸し出す場合は『普通借家契約』または『定期借家契約』の2種類が大半です。
この2つの契約について、大きく分類すると普通借家契約は『定められた年数ごとに更新契約を行うことを前提としている』となり、ほとんどのマンションやアパートなどで結ばれている契約方法です。
一方で、定期借家契約は『当初から5年、10年といった期間を定めており、期間が経過すると契約も満了となる』ものです。こちらは分譲マンションや戸建てなどマイホームを貸し出しする時に結ばれることが一般的です。
たとえば海外への長期出張などにより、決まった期間において家を空ける際に利用されています。
入居者への退去を求める際に、そもそもの契約が定期借家契約の場合、その契約期間を経過すれば何の問題もなく退去させることができます。
しかし、普通借家契約の場合は、貸主が一方的に更新をしないことにより契約を終了する ことはできません。
更新契約としながらも、貸主が更新を拒否するには後述する『正当事由』が必要となるからです。
一般的な感覚からすると、更新契約という言葉から貸主が更新しない権利を持っていると感じるかも知れません。しかし借主保護の観点により法律上は認めていないのが現状です。
入居者を追い出すメリット・デメリット
やや難易度の高い「追い出し」ですが、ここでメリット・デメリットを整理しておきます。
入居者を追い出すメリット
利回りが改善する
現在低い賃料で貸し出してしまっている場合、追い出しをして新たな入居者に貸すことで利回りが改善する可能性があります。
同時に、オーナーチェンジ物件としての資産価値も上がる可能性があります。
逆に、現在高い賃料で契約できている場合は、逆も然り、と言うことになりますので注意が必要です。
トラブルが解消する
賃料支払いや、近隣住民とのトラブルを抱えている場合は、追い出しを行うことでトラブル解消が見込めます。
入居者を追い出すデメリット
手間がかかる
すでに解説しましたが、追い出しは簡単には実施できません。
契約などを確認や、書面を送付などに加え、長期化した場合には時間的にもかなりの手間がかかります。
トラブルの泥沼化
交渉がスムーズに進んだ場合は良いですが、全てがうまくいくわけではありません。
訴訟への発展や、逆恨み・嫌がらせなどを受けてしまう可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
入居者を追い出す(退去させる)手順について
実際にオーナーチェンジにより入居者を退去させる場合、以下の手順を取っていくことが必要です。
- 賃貸借契約における契約不履行となる事由が発生していないかを確認する
- 定期借家契約への切り替えができないか検討する
- 正当事由により更新を拒否する
これらの手続きについて順に説明していきます。
契約不履行となる事由
契約不履行とは賃貸借契約に記載されている内容に対して、借主が違反する行為を行っていることを指します。
ここ数年、賃貸借契約書面に公序良俗に反する行為や反社会勢力の排除といった項目について、ほとんど記載されるようになりました。
こうした項目に対して違反している場合は、速やかに退去を求めることが可能です。
しかし家賃の支払いが遅れている場合は少し注意が必要です。
たとえ契約書面上に「1ヶ月または1回でも家賃の支払いが遅れた場合は退去を命ずることができる」と記載されていたとしても、その効果は認められない可能性があります。
これは借主となる入居者保護の観点によるもので、たとえば月末に支払う予定だったが病気になってしまった、事故に遭って入院していたなど、不可抗力により遅延となった場合でも退去させられることを防ぐためです。
最近であれば、コロナウイルスにより外出不可になった場合など、銀行に行って振り込まないと退去というのは、少し横暴と考えるのが一般的でしょう。
他にも金融機関のシステムダウンによる振込不可なども同様です。
過去の判例から考えると、家賃の支払い遅延は3ヶ月程度。
そして、その間に貸主が督促をしていることが必要条件となります。
こうした条件を満たすなど、契約上の違反行為があれば、それを正当事由として退去を求めることが可能となります。
定期借家契約の切り替え
そもそもの契約自体を普通借家契約から定期借家契約に切り替えることによって、退去までの期限を定めるという方法が考えられます。
ただ契約を切り替えるだけでは、入居者が不利益を被るため、この方法については入居者に対するメリットを考える必要があります。
たとえば「2年間の定期借家契約に切り替える」その代わりとして「その2年間の賃料は半額とする」などです。
入居者を追い出したいと考えるようなトラブルメーカーの場合、この交渉はあまりうまくいくことはないと考えるべきです。
それでも先程の2年間の例であれば、もし入居者が当初から2年程度で退去しようと考えて いた場合、渡りに船とばかりに承諾するかも知れません。
その場合は損をしたと思うかもしれませんが、トラブルの原因を解決できる退去期日を明確にすることは大きな利点です。
正当な事由について
更新契約を拒絶する正当な事由とはどのようなものがあるのか。
判例から紐解くと以下の内容を総合的に判断することになります。
- 建物の利用に対する必要性
- 賃貸借契約に対する履行・整合性
- 利用状況について
- 建物自体の状況について
- 金銭等の提供
これらを1つずつ簡単に解説します。
建物の利用に対する必要性
貸主が、その建物を利用する必要性があるかどうかは、正当事由として大きな影響を与えます。
たとえば対象となる物件がバリアフリーであり、同様の状況にするのに数百万を要する場合。
貸主が事故に遭遇し、その物件が必要となった一方で、借主が他に自宅を所有し健康であれば、どちらがその物件の必要性が高いかが問われます。
賃貸借契約に対する履行・整合性
賃料の支払いが行われているか、その金額が正当かどうか。
また金額が不相応に低い場合、改定の状況はどうかなどが問われます。
ここには賃貸借契約が結ばれてからの期間なども加味されますが、影響は薄いといえるでしょう。
利用状況について
トラブルなど他の入居者および貸主に対して、被害をあたえていないか。
また出張などにより部屋を空けている(=利用していない)期間はどうなのか。
など利用状況が契約や法律を遵守しているか、また実際に利用しているかどうかを問います。
建物自体の状況について
こちらは建物そのものの状況であり、たとえば地震や火事などの災害による損害状況、アスベストの発生など大型修繕の必要性についてが焦点となります。
ここでは違法建築による取り壊しなども含まれます。
金銭等の提供
ここまでの項目を勘案し、正当な事由を充足するかを判断するのですが、ほとんどの場合において不足するでしょう。
その不足を補う方法が金銭等の提供です。
もっとも多く行われるのが立ち退き料とされる金銭提供であり、敷金の全額返金および引っ越し費用などを貸主が負担する方法です。
地域により異なりますが、相場としては40〜80万円程度とみられています。
この他に別の物件を提供する方法もありますが、今回の趣旨には少しそぐわないかも知れません。
よくある質問
Q1. 一棟のオーナーチェンジを購入するときに気を付けることはありますか?
強引な手法で集めた入居者でないか、設備の状態はどうか、入居者とトラブルを抱えていないかなど、利回り以外の部分もよく確認することが大切です。
Q2. 賃貸借契約には種類がありますか?
賃貸借契約には、「普通借家契約」「定期借家契約」の2種類があります。
Q3. 入居者を追い出すことは簡単にできますか?
入居者を追い出す難易度は高いです。交渉によって進めるか、家賃滞納などの正当事由をもとに、手順を踏んで対応する必要があります。
Q4. 数年以内に退去してもらいたい場合、有効な手段はありますか?
普通借家契約の場合、交渉によって定期借家契約に切り替えてもらうという手段があります。
Q5. 正当事由にはどんなものがありますか?
賃料の滞納、他の入居者へ被害を与えている、災害による建物の損壊などがあります。
まとめ
オーナーチェンジには家賃収入の確保という利点がある一方で、問題のある入居者を退去させることは、多くの手間と金銭を要します。
そのため、投資物件を購入する際には、可能な限り現在の入居状況や帳簿などを確認するようにしましょう。
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