瑕疵担保責任から契約不適合責任へ。民法改正による変更点とは
更新日: 2023.03.14目次
2021年4月1日の民法改正により、売主(または請負人)の不備による責任を問う法律が「瑕疵(かし)担保責任」から「契約不適合責任」に変わりました。
それにより、不動産の取引においては買主のメリットが大きくなり、売主にとってはデメリットが大きくなったと言われています。
ここでは瑕疵担保責任について改めて説明するとともに、新しく定められた契約不適合責任との変更点について解説します。
瑕疵担保責任と契約不適合責任とは
瑕疵担保責任とは「その売買物(土地や建物)について隠れた瑕疵がある場合、責任を負う」と、定められており対象は隠れた瑕疵です。
一方で契約不適合責任は「その契約内容について、数量や品質などが異なる場合、責任を負う」ものです。
一見すると同じ意味に感じますが、契約不適合責任は今まで以上に『契約』が重要となります。
瑕疵担保責任の考え方
前述のとおり、瑕疵担保責任は隠れた瑕疵が発生した場合、売主が責任を負うものです。
この「隠れた瑕疵」とは契約時には分からなかった欠陥・問題点を指しており、買主が知らずにうける損失を守るために定められています。
また、その対象は特定物とされており、土地の売買であれば土地、建物の売買であれば建物を示すのが一般的です。
たとえば、土壌汚染によりマイホームの建設が不可能な土地の売買が行われた際、売主が汚染について知らなかった場合は「売主は契約の履行をしている」ことから責任は問われない可能性があります。
これでは買主が一方的に不利益を被るため、瑕疵担保責任を定めることで買主に損害賠償請求権と解除権を付与しています。
そのため、瑕疵担保責任により買主が行える行為は損害賠償請求か契約の解除となります。
契約不適合責任の考え方
一方、契約不適合責任は契約そのものに対しての不備を対象としています。
この場合の不備とは具体的には、契約上の種類・数量・品質(仕様)などが異なる場合を指します。
また瑕疵担保責任が法定責任によるものでしたが、契約不適合責任は契約責任を根底としています。
そのため「契約不適合責任は債務不履行として考える」こととなりました。
それにより損害賠償と契約解除の他に、追完請求権(契約どおりの納品を求めるもの)や代金減額請求権も新たに付与されています。
法改正が行われた要因について
瑕疵担保責任は、あくまで法定責任に基づくものであり、特定物を対象としています。
不動産の特定物(唯一無二の存在)は土地、建物となりますが、その他の取引においては、そもそも特定物なのかどうかの定義が難しい面があります。
また不具合があれば、本来は損害賠償の対象になるところを代替品の提供等で済まそうとする売主も多く、定められた法律と実際の運用が異なる傾向が見られていました。
それを解消するために瑕疵担保責任を契約不履行として取り扱いするべく、契約不適合責任が定められることとなりました。
瑕疵担保責任と契約不適合責任との違い
瑕疵担保責任と契約不適合責任の考え方と法改正の理由を説明しましたが、実際にどのように異なるのでしょうか。
大きな違いは追完請求権と代金減額請求権が認められたこと、そして責任の保全とされる権利の行使に関する考え方が異なる点です。
考え方は前述のとおり法定責任から契約責任となり、契約不履行が問えるようになりました。
対象物
瑕疵担保責任は特定物に対しての責任となりますが、契約不適合責任は契約そのものに対してとなります。
また『隠れた』という要件が無くなったことも大きなポイントです。
恐らく今回の法改正により、裁判による論争になるであろう2つの要件の1つが、この点です。
以前は隠れた瑕疵に対する責任となっていました。この「隠れた瑕疵」の定義とは、特定物の売買契約締結時において、買主が知り得ることが出来なかった欠陥・問題点を指します。
極端に言えば玄関扉がない等は一目瞭然のため『隠れた』とはならないものです。
一方で契約不適合責任とは、あくまで契約内容に対して責任を問うものです。
本来、建物には玄関扉が存在するのは当たり前のことですから、契約書面に『玄関扉がないこと』の明記がなければ売主に責任が発生することになります。
このように現在の法解釈では契約書面の書き方が重要となりますが、どこまで認められてどこから契約不適合責任に関わってくるのかについては、今後トラブルになると推測されます。
損害賠償
帰責事由とは「責めに帰すべき事由」という意味であり、責められるに値する理由や落ち度を指します。
瑕疵担保責任は帰責事由の有無は不要であり、売主に落ち度がない場合でも「瑕疵がないことによる得られた利益」に対して損害賠償請求の対象となります。また改正後の契約不適合では、契約不履行の考え方から帰責事由が必要となる一方で、その範囲を「契約が履行された場合に得られた利益」にまで広げることとなりました。
前者の場合は土地や家を取得することで得られた利益が対象でしたが、後者ではその後の転売や値上がりなどの利益も対象としています。
追完請求権
改正民法の562条1項本文に以下のように定められています。
「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」
簡単にいえば『契約に不備があれば、それを追加し完了するよう請求できる』ということです。
契約不適合責任においては、雨漏りや設備不良があれば補修を求めることが可能ですし、契約上にミストサウナを設置すると記載しながら未設置の場合は、設置をするよう求めることが可能となりました。
以前の瑕疵担保責任では、この追完請求権がない代わりに前項の損害賠償として「瑕疵がないことによる得られた利益」を請求することになります。
代金減額請求権
代金減額請求権については改正民法563条1項本文に記載されています
「買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる」
こちらも瑕疵担保責任では権利がありませんでしたが、改正民法により契約不適合責任で権利を得ることとなりました。
追完請求権を行使した後に履行されなかった場合、代金を減額することで相殺することを可能とする権利です。
契約解除
契約解除における改正民法は民法第542条の1項です。
「次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき」
契約の履行がされない、また目的が達成できない場合は無催告にて解除することが可能となります。
この「目的の達成」について法的に判断する材料は契約内容をどこまで満たしているかどうかになりますので、今まで以上に契約書面が重要となります。
以前の瑕疵担保責任においては、あくまで社会通念上という「各々の常識」に頼る部分があるため、買不誠実な不動産会社の主張に対する術が買主にない場合が往々として発生していました。
そうしたことを防ぐためにも、今回の民法改正は有意義といえます。
責任保全
瑕疵担保責任については、隠れた瑕疵を見つけてから1年以内に解除か損害賠償か権利行使を行う必要があります。そのため権利行使の判断が難しいこと、後から他に不具合が発生した場合など、様々な問題がありました。
今回の契約不適合責任では権利行使はせずとも、通知をすれば事足るようになるため、買主がしっかりと検討する時間を設けることが可能です。
契約書面の重要性が高まる
今回の民法改正による契約不適合責任は『契約に対する責任』が重要となりました。
それだけに契約書面の記載内容、特約事項の表記は売主・買主ともに今まで以上に気を付ける必要があります。
一方で不動産会社の担当者としては改正民法による、契約不適合責任に関する知識が問われるでしょう。
しっかりと意識した契約書面、重要事項説明書が作成できるかどうか。また各種権利を正しく遂行することができるかは、企業イメージも含めて大切になります。
こうした法改正のあとは判例がなく、解釈の相違から様々なトラブルが発生しやすくなります。
それを未然に防げるかどうかは不動産会社の腕の見せ所でもありますし、売主・買主ともに意識しておくと、スムーズな取引が可能となるでしょう。
よくある質問
Q1. 「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変わったのはいつですか?
2021年4月1日の民法改正により、変わりました。
Q2. 瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いを一言で教えてください。
契約不適合責任は、より「契約」が重要視されている点が違いです。
Q3. 契約不適合責任で注意すべきことは何ですか?
契約書面の記載内容、特約事項の表記に気をつける必要があります。
双方に内容を吟味し、納得したうえで契約を締結するようにしましょう。
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