マンション売却をやめたい..やめる方法と違約金が発生するケースを解説
更新日: 2023.03.16目次
ライフスタイルの変化や、資金計画の問題によって、分譲マンションの売却を検討することも考えられます。
世間的に、マイホームを売却するのは「お金に困った人」による最後の手段とも思われる傾向がありますが、最近では不動産の購入=終の棲家ではなく、住み替えなどを行い、その時時に応じた「最適なマイホーム」を求めることが主流となりつつあります。
また、マイホームを含む不動産とは、あくまで1つの資産であることから、売却や賃貸化することは資金調達の手段として有効な方法です。
しかし、売却を検討し、実際に動き始めてみた後に、さまざまな状況の変化が生じた結果、マンション売却をやめたいと考えることもあるかもしれません。
ここでは、マンション売却をやめることによる手続きと、違約金などによる金銭負担や注意点について説明します。
マンション売却の契約解除について
分譲マンションを売却する際に締結する契約は、大きく分類して2種類存在します。
1つは不動産会社に対して、購入希望者を探すことを依頼するために締結する「媒介契約」であり、1つは買主と契約を締結する「不動産売買契約」です。
流れとしては「媒介契約」を締結し、購入希望者を探して「不動産売買契約」を締結します。
媒介契約の解除と違約金について
不動産会社に対して、購入希望者を探すことを依頼する「媒介契約」ですが、これも3種類存在します。
複数の不動産会社に依頼する際に締結する「一般媒介契約」と、1つの不動産会社にのみ依頼することを目的として締結する「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」です。
なお「一般媒介契約」の期間に法律上の定めはありませんが、「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」については宅地建物取引業法により最大3ヵ月と定められています。
契約書面に4ヵ月、5ヵ月と記載されていても、3ヵ月経過時点で更新しなければ契約は自動的に解除されます。
このことから「一般媒介契約」には定めはありませんが、不動産業界の通例として3ヵ月の期限を設けて締結することが一般的です。
つまり、分譲マンションの売却をやめたいと考えた場合、購入希望者を探している段階であれば媒介契約を解除するだけとなり、また3ヵ月を期日として自動的に解除されることから、違約金を含めた金銭的な負担はないものです。
売買契約の解除と違約金について
媒介契約と異なり、分譲マンションを売却するための売買契約を締結した後の解除は、無条件で行うことが難しくなります。
そもそも、売買契約を締結とは『具体的な条件を定めて分譲マンションを売却することに同意する』ことを指します。その後に契約を解除する意思を示すことから、違約手付の支払いや損害賠償にあたる違約金の支払いが必要です。
契約締結後の売主都合による契約解除について
分譲マンションだけではなく、不動産において売買契約の締結後に、契約そのものを解除するには制約が存在します。
ここで鍵になるのが、相手側となる買主が契約の履行に着手しているかどうかです。
契約履行に着手する前と後では、必要となる対応と請求される金額に違いが生じます。
契約の解除には支払いが伴う
買主が契約の履行に着手する前であれば、売主は違約手付を支払うことにより、契約の解除を求めることが可能であり、着手後であれば違約金の支払いが必要です。
どちらの場合も、契約を解除するためには金銭の提供が必要になることは、注意するべきであり、それ以上に、締結した契約を解除するということは、買主に対して大きな負担を与えることである点は特に考慮するべきといえるでしょう。
手付金の倍額が必要
買主が契約の履行前であれば、解約手付金として買主が支払った金額に対して、倍額の支払いが必要です。
たとえば、買主が手付金として200万円を支払っている場合、売主は手付金200万円を返金したうえで、さらに違約手付金として200万円。合計400万円の支払義務が生じます。
そのため、買主サイドからすれば頭金・中間金の性質を持つ手付金の支払いについて、初期費用の負担を減らすため、できるだけ少ない金額にしたい気持ちと、売主からの一方的な契約解除を抑制できる金額にする考え方と、折り合いをつけた金額にするべきです。
一般的な手付金が売買金額の5%〜10%とする傾向にあるのも、この考え方に基づいているともいえます。
契約履行の着手と認められる行為
ここまで説明している『買主による契約の履行、また契約履行の着手』とは具体的に以下の2点があげられます。
- 中間金など代金の支払いを行った場合
- 売主に対して契約の履行を要求した場合
代金の支払いはわかりやすい契約の履行といえるでしょう。
すでに金銭の支払いを行っているのですから、買主に契約を履行(契約に従う)する意思は明確だからです。
一方で、売主に対しての契約履行の請求は、少し複雑に感じるかもしれませんが、簡単に説明すると『(中間金を支払う準備ができているから)移転登記や引き渡しを○月○日までに実施して欲しい』と要求することなどです。
これは契約と同様で、口頭での請求でも構いませんが、後にトラブルになりやすいことから、内容証明郵便などを利用するのが通例です。ただ、近年では電子メールによる請求も増加の傾向にあります。
なお、契約書に手付金放棄(違約手付金)により解約できる期間を設けている場合は、契約履行の着手の有無に関わらず、違約手付金の支払いにより契約を解除することができる点は、ここ数年の通例となっています。
違約金が発生する
買主による契約履行の着手が行われた後に、売主が契約の解除を要求する場合は、手付金による解除ではなく、定められた違約金(損害賠償金)を支払います。
そのため、手付金の倍返しより高額ですので、マンション売却をやめるかどうかの判断は遅くとも契約履行の着手前に行うことが、売主のみならず買主に対しても1つの目安となるでしょう。
住宅ローン特約による解除
一方、買主が金融機関に対して住宅ローンの借入審査に通らなかった場合、契約の履行することができないため、自然と契約解除にむけた調整を行います。
この場合、売買契約書に記載された住宅ローン特約の取り扱いに従いますが、一般的には契約の自動解除、および手付金の全額返金となります。
契約不適合責任による解除(買主のみ可能)
物件の引き渡しが完了した後に、契約内容に不備がある場合、その内容により買主は補修・契約金額の削減、または売買契約そのものの解除を要求することが可能です。
これは近年の法改正により、以前の瑕疵担保責任から契約不適合責任に様変わりしたものです。また契約の不適合な内容が軽微であり、補修が可能な場合は契約の解除を申し出ることはできないなど、一定の制限がされています。
クーリング・オフによる解約(買主のみ可能)
買主は一定の条件を満たす場合、契約締結より8日以内であればクーリング・オフにより解除することが可能です。
ただし、要件の1つとして以下の場所で締結した場合は対象外です。
- 売主の事務所、または準ずる場所
- 買主の自宅、勤務地
つまりクーリング・オフの対象となる場所は、ファミレスやカフェなどの飲食店。売主が届け出をしていない場所(倉庫など)、また車の中などになるでしょう。
これらの要件が存在する理由は、強要されたり冷静な判断ができない状態で「締結させられた悪質な契約から守るため」に売買契約のクーリング・オフが存在するからです。
よくある質問
Q1. マンション売却を途中でやめる人はいますか?
いらっしゃいます。売却の必要がなくなったり、売却の時期を変更したい、もう一度よく検討したい、などが理由として挙げられます。
Q2. 売却を途中でやめると違約金が発生しますか?
媒介契約については、基本的に違約金は発生しません。
売却をやめたいと思ったら、仲介会社に連絡してレインズやポータルサイトから物件を取り下げてもらいましょう。
媒介契約は期間が満了すれば自動的に解除になります。
Q3. 売買契約の解除に違約金は発生しますか?
売買契約の締結後であれば、売主都合の契約解除のため違約金が発生します。
売買契約書に定められた違約金の額を買主に支払う必要があります。
Q4. 買主が住宅ローン審査に通らずに契約解除になる場合、売主は違約金を受け取れますか?
受け取れません。売買契約書に記載された住宅ローン特約の取り扱いに従いますが、一般的には契約の自動解除、および手付金の全額返金となります。
まとめ
分譲マンションの売却をやめたいと考える場合、やむを得ない理由があるはずです。
それでも金銭的な負担が大きくなるため、もし可能性があるのであれば、事前に解消しておくことが重要です。
また双方、合意による契約解除ができれば、違約金などを支払う必要はありません。
それでも誠意をもった対応は必要ですので、トラブルを回避するためにも、できる限り契約を締結するまでに判断するようにしたいものです。